大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1951号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決中控訴人に被控訴人に対し原判決添付物件目録記載の仏像の引き渡しを命ずる部分を取り消す。右被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の提出、援用および認否は、次に改めるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目―記録一七丁―表四行目冒頭から原判決三枚目―記録一八丁―表七行目末尾までを「原告は昭和三三年一〇月二五日、被告からその所有する原判決添付物件目録記載の仏像(以下単に本件仏像という。)を買い受けた。よつてその引渡を求める。」と改める。

二  原判決三枚目―記録一八丁―表一一行目「被告」を「宗教法人である被告」と、同行から裏一行目の「重要文化財」を「宝物」とそれぞれ改める。

三  原判決三枚目―記録一八丁―裏一一行目「また被告は」から原判決四枚目―記録一九丁―表一行目「無効である。」までを「また本件仏像は重要文化財であるから、これを原告に売渡そうとする被告は文化財保護法四六条(昭和四三年法律九九号による改正前のもの、以下旧法という)により、まず文化財保護委員会に対し買受人の住所、氏名、予定の譲渡代金額等を具体的に記載した書面をもつて国に対する売渡の申出をなす手続を採らなければならなかつたのに、その手続はなされなかつた。よつて被告の原告に対する本件仏像の売渡は無効である。」と改める。

四  原判決四枚目―記録一九丁―表九行目の「得ていなかつたとしても、」とあるのを「得ていなかつたため無効とされるとしても、」と、同表一〇行目の「右承認がないことをもつて」とあるのを「その無効をもつて」と、同裏一行目「原告は、」とあるのを「前述のとおり」と、同裏三行目「ことから」から同裏七行目「なかつたのである。」までを「ところ、国が買い取らなかつたので、被告は本件仏像を担保として他から金を借り入れるに至つたが、担保流れとなるおそれが生じたので、その懇請により原告はこれを買受けたのである。したがつて原告としては、前記代表役員の承認が、国に対して譲渡することにのみ限定されてなされたことなど知る由もなく、その譲受については被告主張のような障害はないと信じていたのであつた。」とそれぞれ改める。

理由

一  当裁判所は、控訴人に対する被控訴人の本件仏像引渡請求を正当とするものであつて、その事実認定およびこれに対する判断は、次に、削り、加え、改めるほか、原判決がその理由中に説示したところ(原判決五枚目―記録二〇丁―裏一行目から原判決九枚目―記録二四丁―表五行目「ということになる。」まで)と同一であるから、その記載を引用する。

1  原判決五枚目―記録二〇丁―裏一行目「1、2、3」を削る。

2  原判決五枚目―記録二〇丁―裏一〇行目の「定めている。」とあるのを、「定め、また旧文化財保護法第四六条一項は、重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額等を記載した書面をもつて、まず文化財保護委員会に国に対する売渡の申出をしなければならない、と定めている。」と改める。

3  原判決六枚目―記録二一丁―表六行目に「それぞれ」とあるのを「華厳宗の末寺ないし宗教法人たる被告は」と、同裏一一行目の「買い取らない」とあるのを「買い取る必要を認めない」とそれぞれ改める。

4  原判決七枚目―記録二二丁―表三行目の「文化財保護委員会に」とあるのを「文化財保護委員会に対し国への」と、同裏一〇行目の「ならない。」とあるのを「ならず抗弁1は理由がある。」と、それぞれ改める。

5  原判決七枚目―記録二二丁―表一一行目の「尤も」とあるのを「なお、前示のとおり」と改め、同裏一行目の「保護委員会に対し」の次に「国への」を加え、同裏四行目の「付書面をもつて正式に」とあるのを削り、同裏五行目「回答しており」から同裏八行目「相当である。」までを「回答していることを合せ考えると、右日時より相当期間内に締結された本件仏像売買契約は、旧文化財保護法四六条の定める手続を践んでからなされたものとはいえないけれども、同条が保障しようとする国の先買権を無に帰せしめるものとまではいい難いから、有効と認むべく、これを無効とする抗弁2は理由がない。」と改める。

6  原判決八枚目―記録二三丁―表一行目「被告は」の次に「前示のように華厳宗代表役員の承認を得て、国に対して本件仏像の売渡の申出をしたのは、その運営資金調達のためであつたところ」を加え、同表二行目に「確定した後」とあるのを「確定したので」と改める。

7  原判決八枚目―記録二三丁―表六行目に「常盤文庫」とあるのを「常盤山文庫」と、同一〇行目に「右認定事実からすれば、」とあるのを「右認定事実に弁論の全趣旨をあわせると」とそれぞれ改め、同表一一行目の「既に」から同裏一一行目の「その際に」までおよび同裏三行目を「を得ていたことから、右承認」を削り、同裏四、五行目の「原告と」の次に「これを」を加え、同裏七行目に「然も」とあるのを「しかも」と改める。

8  原判決九枚目―記録二四丁―表六行目に「本訴請求はすべて理由がある」とあるのを「本件仏像引渡請求は正当である。」と改める。

二  してみれば、控訴人の被控訴人に対する本件仏像引渡請求は正当であり、これを認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条一項によつてこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき同法八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例